健康優良児

ここに1枚の写真がある。
3人兄弟の真ん中、後継ぎは男子の時代に、「次こそは男の子」の期待を裏切り産まれてきた。

「私は何時頃産まれたの?」
何かの占いで、産まれた時間を知りたくて、亡き母に尋ねたことがあった。
「さぁ、何時だったかなぁ〜覚えてない。」
産婆さんが自宅に来て、赤ちゃんを取り上げた時代。
兄弟の記憶がごっちゃになって曖昧なのだという。

きちんとした写真が珍しい時代に、色あせたこの写真だけは2Lの大きさ。



「贈 昭和34年度 乳幼児審査会入選記念 ○○町」

母の話によると、赤ちゃんの私はミルクをよく飲み、丸々としていた。
それで健康優良児に選ばれたのだが、ハイハイ競争でよだれが激しく、入選止まりだったそうだ。 でもこれは母の話であって、真偽のほどはよく分からない。

当時の粉ミルクは今と違って、たくさん飲めばぶよぶよになったのかも知れない。 写真を見ても、ぶよぶよとしている。
母乳が出ない母は、粉ミルクや山羊(家で飼っていた)の乳を飲ませてくれた。 元来食欲旺盛だった私は、産まれつき貪欲にミルクを飲んだのだろう。

日本が経済的に発展を遂げようとする時代。
太った赤ちゃんは健康なイメージで、健康優良児としてのコンクールがあったのだろうか?
果たして、健康優良児なる言葉もあったのかどうかも不確かである。

ただこの写真はあるのだから、何らかの審査があって入賞したのは事実だろう。
そして今まで大病もせず健康に過ごしているのだから、健康優良児といういい方も当たっているのかも知れない。

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