大宇陀の夜明け
東(ひむがし)の野にかぎろひの立つ見えて
かへり見すれば月かたぶきぬ
柿本人麻呂 ―万葉集―
かぎろひとは冬の朝、陽が上がる前に山が染まっていく自然現象のこと。
辺りが、紫や橙・赤に染まっていく幻想的な雰囲気である。
今月は柿本人麻呂が、奈良県大宇陀(おおうだ)で歌を詠みながら見た風景を、先生が図案化された作品に取り組んだ。
サイズは、縦24cm×横33cmのA4サイズぐらい。
前に見える赤い山は、稲佐山(いなさやま)である。
初め、淡い感じの色を塗り重ねていった。
よく似た色を微妙に変えるのは、難しいものである。
乾いて、2回目塗り重ねようとすると、どの色を混ぜたかが分からなくなる。
全体のバランスを考えながら塗るのだが、1ケ所塗ると他が物足りなく感じ、つい触りたくなってしまう。 塗るのをどこで止めるかが難しい。
塗り終わると、最後に黒でアクセントを入れる。
これで、絵がしまってくる。
色を定着する為5日間乾かし、水に浸ける。
この生地は糊が落ちやすく、20分位で溶けてくる。
すると黄土色だった部分から、はっきりとした白い線が出てくる。
同じ図案でも、色の塗り方や布質で雰囲気が変わる。
「稲佐山はもう少し薄い赤が良かったかも?」とちょっぴり反省。