お雛様





朝早く起きると、酢のいい匂いがしてきた。
今日は雛祭りなので、お姑さんがご飯に酢を打ち、ちらし寿司を作ろうと
台所に立っていた。
お姑さんは80歳を過ぎているが、体はおろか気持ちもしゃんとしている。季節の行事にはこうやって台所で料理する。
孫やひ孫の祝いに腕前を発揮するのだ。

私は結婚後もフルに働いていたので、出産して孫が一才になる前からお姑さんに見てもらっていた。 同居していたので、朝から夕方私が帰るまでの間。 しかも幼稚園の送り迎えもしてくれた。 子もりに休みなしというが、自分がばあばになってその大変さがよく分かる。いくら孫が可愛いとはいえ、毎日預けられたらストレスもさぞ溜まったことであろう。

おかげで子どもたちは、元気にすくすくと育った。
仕事や結婚で家を離れたが、たまに帰ってくると相談したり世間話をしたりしている。
祖父母も孫の帰郷を楽しみにしていて、仕事先へ戻る時は、
「また顔見せてや。」「体に気をつけや。」と必ず声をかけている。
祖父母の愛情は、親以上かと思えてくる時もある。

今年のお雛様は、2組飾った。
一つは、娘の初節句に私の実家から30年程前に贈られた物。
もう一つは、私たちが孫のために買ったマンション用のお雛様。
段飾りを止め、その代わり二つ仲良く並べることにした。


私はお雛様が好きで、人形を見ていると何時までも飽きない。
子どもの頃段飾りのお雛様に憧れたが、家にはなかった。だから初めてお雛様を娘の為に飾った時、その華やかさがまばゆいくらいだった。

今日は、娘宅までお寿司と料理を届けに行ってきた。
孫はまだ2才だが、嬉しそうな顔で「有難う」と言ってくれた。
来年は自分でもお雛様を飾る事ができるだろうか?
一年一年の成長が、喜びである。

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