父が倒れた

ある日突然、父が倒れた。
それは朝、洗濯物を干していた時の事だった。
私は、ご飯を食べに台所へ入る父の姿を見た。

しばらくすると、突然ドドーンと鈍い音がした。
それは、今まで聞いた事がない不思議な音だった。

とっさに私は「倒れたー」と思った。
何故そう思ったのかは分からない。
初めて聞く鈍い音が、本能的に父だと思った。

あわてて見に行くと、そこには血を流している父がいた。
「お父さん」
頭が真っ白になり、声をかけて起こそうとすると、父はすぐに気がついた。
「わし、ご飯食べてたのに、どうしましたのかなぁ」
本人は、倒れた事にすら気がついていない。

幸い朝だったので夫がそばにいて、すぐに来てくれた。
しばらく横になり、タオルで押さえながら血が止まるのを待った。

どうやらイスに座り、食べている途中に気を失ったようだ。
倒れた拍子に、野菜かごのプラスチックに当たり、破片でこめかみを切ってしまった。

病院へ行き、傷口を縫ったり検査したりの一日だった。
破片が目にささってないか心配したが、切り傷で済んで良かった。
脈が一時、不整になった事が原因のようだった。
その後の検査では大丈夫ということで、傷口も順調に治ってきている。

考えたら、もう83才。
いつも元気に農作業をしているので、こんな事は思いもしなかったけど、
倒れる事があっても不思議ではない。

これは、5日ほど前の出来事。
心配したが、今は傷口も痛まず順調に治ってきている。
今日も畑へと出かけて行った。




いつも元気にしていると、ついそれが当たり前のように思ってしまう。
健康に感謝し、無理しないでと思いながら過ごしている。

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