木の痛み




車がよく通る、広い道路横の歩道。
固いアスファルトを突き破り、大きな木が生えている。

まるで歩行者に遠慮しているかのように、
枝の先は、窮屈そうに棚の隙間から伸びている。
青空の方へ太陽を浴びようと、
でも、けっして歩道には、はみ出ない。

もし、真っ直ぐに伸びようものなら、
歩く時の邪魔になり、人間様に切られるとでも思ったのだろうか?
小さな木が先に根をはっていた所を、後から舗装したかも知れないと
いうのに。
ただ、ただ黙々と・・・・・
まさか、木にそれだけの知恵はないだろうが、
私には、生き延びるための知恵に思えてくる。

まっすぐに伸びていたら、
思いっきり枝を伸ばし
青空をつかみにいく事もできたのに・・・
そよ風に揺られ、
葉っぱを優雅に揺らす事だってできたのに。
もっと多くの人を魅了していたかも知れないのに。

通るたびに、木が痛々しく思う。




これが、人間だったら何と言おう。
声なき木だから、
今も我慢し続けているのだろうか?

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