子どもは親を選べない

ニュースで流れる女子高生のショキングな事件。
高校生が父親と離れ、ひとりで暮していたことにも、また驚きである。
何とか未然に防ぐことはできなかったのだろうか?

高校生が精神的に不安定で、事件を起こすかもしれない予兆があったというのに、ひとりで暮しをしていたことに疑問を感じている。
そしてこの報道を聞いているうちに、私が関わったある男児のこと(仮にAとする)を思い出した。

二十年ほど前のことである。
当時小学校6年を担任していた2月、卒業式をあと1ヶ月ほどで迎えようという多忙な時に、私のクラスにAが転入して来ることとなった。
校区には児童養護施設があったので、卒業まじかの急な転出入は珍しくはない。

施設に入った理由は個人的なことなので詳しくは控えるが、学校での非行や親への暴力などがあり、面倒見切れなくなった母親が施設に預けたという事だった。体が大きく非行歴もあるというのだから、どんな子どもであろうかと、話を聞いて不安になっていた。 「みんなで見るから」・・同僚の言葉が心強かった。

そして、いよいよAが転入してきた。
会うと背は私より大きくて体格も良かったが、聞いていた粗暴なイメージではなく、色白のあどけない子どもだった。
体格こそ大きかったが、6年という思春期の難しい子が多い中で、彼はよくしゃべり人なつこかった。

遊放時にはそばへ来て話をするし、進んで手伝いをしてくれた。
彼は他の子どもたちよりもずっと素直で、非行歴のかけらも感じられなかった。
どんないきさつや事情があったのだろうか・・・
それは他の先生たちも、同じように感じていた。

それから1ヶ月・・・卒業式の練習が繰り返される日が続いた。
別れの言葉は、恥ずかしがる子どもが多い中で、声をはりあげて言うなど堂々としていた。
「めっちゃいい子じゃない〜」
1ヶ月が過ぎても素直さは変わらず、荷物を持ってくれるなど優しい子で、他の教師も同じ思いでいた。

その子が一度だけ、泣いた事がある。
「お母ちゃんが卒業式に来てくれへんねぇ〜」
施設に来てから一度も母に会っていないのだという。
「お母ちゃんに会いたい!」 やっぱり母が恋しかったのだ・・・


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