ホクロ

小さい頃から、右唇の上にホクロがある。

30代の頃、突然そのホクロが気になりだし取りたくなった。
すると偶然、シミやホクロを取るエステの広告を見つけた。
綿棒が黒くなっている写真が載っていて、取れたホクロの色素だというPRに魅かれ体験を申し込んだ。

予約日に店へ行くと、体験だからか1個だけの処置だという。
全部奇麗にして貰えるものだと思っていた私は、肩すかしをくった。

それでも気を取り直して、気になる右唇上のホクロを指定すると、
年輩の人が、「これは衣装ボクロと言って縁起がいいでしょう。取るの?」と聞いてきた。

確かに「右唇の上にホクロがある人は、着る物に困らない」という記事を読んだ事がある。 でも占いを信じてなかった私は、気にせず、「取りたいです。」と答えていた。

それでお店の人が説明を始めたのだが、ホクロがすぐに取れる物だと思っていた私はがっかりした。

ホクロは皮膚の奥まで色素があるので、一度に取ると傷後が残る。
だから表面の黒い部分を取り、皮膚が浮かび上がってきたらまた取り、それを繰り返していくのだという。
表面が取れても紫外線に当てるとまた黒くなり易いので、太陽に当てないようにという話だった。

とりあえず処置(機械をころがすだけで痛くない)をして貰い、色素が取れたと綿棒を見せてくれた。
でも完全に取るまで期間がかかると聞いて、次を予約しなかった。
今から思うと、「行くならエステでなく皮膚科でしょう〜」と自分に突っ込みを入れるところだろう。

数十年経った今、ホクロは薄く目立たなくなり気にならない。
でも鏡を見ると、エステでの会話を思い出す。

奇しくも、右唇上のホクロが薄くなってから衣装に縁が薄くなってきた。
阪神大震災を経て価値観が変わり、
たんに服を買わなくなっただけなのか、貰う事がなくなっただけなのか・・・

占いから派生した不思議な話である。

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