遠い夏の記憶

子どもの頃、
浴衣を着て盆踊りに行った。

今ほど娯楽が無かった時代。
家のすぐそばが神社で、私は毎年行われる盆踊りが楽しみだった。

その日は朝から盆踊りの舞台が組み立てられ、境内に太鼓の音が鳴り響く。 「ドンドン」という音を聞くと、家でじっとして居られなくって、何度もお宮さんを覗きに行った。
舞台には紅白の幕が張られ、賑やかな提灯がぶら下がっていた。
それを見ただけで、子ども心にワクワクした。

暗くなって提灯に灯りがつくと、舞台の上から河内音頭が聞こえて来る。
お揃いの浴衣を着た婦人会の女性が、円陣を組んで踊り出す。
そこへ子どもたち・老若男女も参加して、何重もの輪ができ、
薄明かりの中で、見覚えある顔がぼんやりと浮かび上がる。
寝る時間をせかされる訳ではなく、その日だけは夜遅くまで楽しむ事ができた。

そしてもう一つの楽しみ 縁日。
あてもんや金魚すくい・ヨーヨーつり・りんご飴・綿あめ・・・
50円もあれば買えただろうか? 記憶が定かでは無い。

小銭を入れた財布を持って、お店を見るのが楽しみだった。
ちょっぴり大人になった気分。
私はあてもん(当時そう呼んでいた)をしたが、いつもはずれ。
1等を当てようものなら、たちまち夜店の英雄に。
大きな景品を抱えた子は、とても誇らしげだった。

今年、久しぶりに夏祭りに行った。
子どもたちは浴衣を着て、はしゃいでいる。
盆踊りはなかったけど、縁日や出し物で大賑わいだった。




子どもの頃 遠い夏の記憶

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