子を想うとき

子を想うとき
いつも頭に浮かぶ光景がある
それは、鮮明に今でもよみがえってくる。

平成15年9月

ある日、外出していると、携帯に電話が入った。
「今から説明会に行きたいんだけど・・・」

その頃、息子は高校受験を控えていた。
志望校を決め、そこへ行くものだと親の私は思っていた。
ところが、息子は気持ちが変わり、別のN校を受験したくなったのである。

あわてて電車に乗り、駅についたものの・・・
急な事だったので、高校へ行く道がわからない。
説明会の時刻が、刻一刻と迫ってくる。
あせる私は、近くにいる人に道を尋ね、高校めざして必死に走った。

ところが、私は走るのが遅い。
息子に先に行くように命じ、後から私はついていった。
その内、二人の距離がぐんぐん離れていく。
何度もふり返りながら、息子は母親がついてきているかを心配そうに見ていた。

その時ふと、こんな光景どこかであったなぁと思った。

幼い頃の息子は、私の手をつなぎ、不安そうにいつも後を追っていた。
私は何度もふり返り、息子の姿を確認したものだ。

ところが、今は私が後を追っている。
小さくなっていく息子の背中が、何だか大きく感じられた。
と、同時に胸に熱いものがこみ上げてきた。
そして、私は息子の旅立ちを感じた。

子を想う時、私はなぜかこの光景を想い出す。
そして、社会人1年生として、旅立っていった息子の幸せをいつも願っている。

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